地方における国立大学の存在意義について(学長緊急声明)

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経済財政諮問会議が6月4日に明らかにした骨太の方針2007(素案)は,各大学への国立大学法人運営費交付金の大幅な傾斜配分を求めるとともに国立大学のドラスティックな再編?統合の推進等を要求している。

国立大学運営費交付金は,人件費や光熱水料等の大学の機能を果たすための基盤的経費であるにも関わらず,効率化係数や経営改善係数により毎年度減額され続けており,このままでも数年後には一部の国立大学の経営が破綻するようなことも危惧される。
先に財務省は競争原理に基づく運営費交付金配分の試算を科学研究費補助金の獲得割合に応じて行ったが,この結果,地方国立大学の殆どが大幅な減額となり,その存在を根底から否定するものとなった。これは一面的な指標による偏った配分であるが,このような配分ルールの下では,地方国立大学が果たしている地域での役割が見落とされたまま,地方国立大学が切り捨てられることになる。
地域の“知の拠点”としてこれまでに地方国立大学が果たしてきた役割の大きさを考えれば,一方的な財政上の視点に偏った配分ルール見直しによる影響は単に地方国立大学の崩壊にとどまらず,地域社会の教育?文化?産業等の衰退を誘引し,地域の活力を奪うものである。
また,この延長上には,財政当局主導による国立大学の機能分化,再編?集約化といった事態が見込まれ,ある県には国立大学が存在しなくなるような状況も十分に想定され,地域格差の拡大が懸念される。

福井大学は,福井県における知の拠点としてこれまでに多くの優れた人材を輩出し,うち教員については福井県全体の約4割,医師?技術者については約3割を占めるに至っている。また,繊維や原子力等の地域特性を踏まえた研究を推進し,教員一人当たりの共同研究件数は国立大学の中でトップクラスにある。医療においては,高度医療の提供,24時間体制での救急患者受入れ,150の地域医療機関への医師派遣等により,県下全域の医療を支えている。しかしながら,今後,運営費交付金の配分ルール見直しにより,地方国立大学の運営費交付金が大幅に削減された場合にはこれらの機能の殆どが低下?消滅し,将来に亘って,地域社会に深刻な打撃を与えることは確実である。
福井大学にとどまらず,地域における国立大学は,あらゆる面において地域社会と密接な関係を持ち,大きな拡がりを持つものであり,地方国立大学を切り捨てることは、すなわち地方の切り捨てとなるものである。また,多数の地方国立大学を切り捨て,ごく一部の大学にその資金を振り向けることで「科学技術創造立国」を実現できると考えることは,全くエビデンスのない危険な発想であり,極めて憂慮される。

このようなことから,運営費交付金の配分ルールは,一方的な財政上の視点ではなく,教育?研究?地域社会への貢献等の視点から総合的に行われるように見直し,基盤的経費は確実に措置されるようにすべきである。また,国立大学から基盤的経費を削減し,偏った視点に基づく「選択と集中」により地方国立大学を再編?統合することがないよう要請するものである。

福井大学は,教育?研究?医療及びこれらを通じた社会貢献を行うことを理念に地域に開かれた大学として活動して参りました。今後も地域の知の拠点として,その役割を十分に果たし,地域社会に貢献できますように関係各位のご支援をお願い申し上げます。

平成19年6月8日
国立大学法人福井大学長
福 田 優

【 関連リンク 】

  • ふくいを支える福井大学
│ 2007年6月8日 │
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