国立大学法人の財政的基盤である運営費交付金は,毎年対前年比1%の削減が行われ,本学においては,平成16年度に比較し平成21年度は約11億円もの減額となっております。
本学は,これまでに,多くの優秀な人材の育成や研究成果の還元により,地域の様々な機能を支えて参りました。特に,平成20,21年度においては,福井県の小中高生の高い学力を育む教師力を高める教職大学院の設置,医師確保に係る福井県の要請に応えた医学部の定員増,地域特性を踏まえた原子力分野の安全性を確立する基盤的研究や人材育成に向けた国際原子力工学研究所の設置等,国の財政支援が殆ど得られない中,本来ならば支給すべき教職員の手当を凍結し捻出した予算も充てて,地域の発展に貢献できるよう最大限の努力を行って参りました。
しかしながら,継続される運営費交付金の削減に対し,やりくりや節約は限界に達し,昨今では老朽設備等の更新の目途が立たない,必要な教員の後任補充ができないこと等により大学の疲弊の度合いが増し,本学のような地方国立大学の役割である地域の教育?研究?医療の拠点としての機能が弱体化し,地域の発展を阻害しかねない状況が生じつつあります。
このような中,6月22日に閣議決定された「財政運営戦略」の「中期財政フレーム」によれば,平成23?25年度の3年間を対象に,国立大学法人の運営費交付金を含む「政策的経費」について毎年8%の削減を求められることになります。
運営費交付金の継続的な削減により疲弊する国立大学に,この削減率が機械的に当てはめられた場合,本学では,年間約8億円,3年間で約24億円の減額となり,これは,全教員620人中約290人の削減に相当し,大学機能の停止を意味するものであります。
また,教育研究機能の維持のため,減額分を授業料の値上げに転嫁した場合,値上げ額は各年22万円となり,地方においても高等教育の機会均等の場として役割を果たしてきた国立大学法人の機能を著しく損ねるものとなります。
さらに,地方国立大学の弱体化や機能の消失は,地域のイノベーション推進や地域の経済発展の芽をつみ,地域の衰退を招くことは火を見るよりも明らかです。
中国,インド,ロシアなどの経済が躍進し,世界大競争時代となる21世紀において,資源の乏しい日本が生き残るには,技術発展を生み出し,新たな価値を創造する「人」への投資が不可欠であり,知識創造の源である高等教育機関への投資をひとり日本のみが減らし続ければ,世界の中で日本は着実に落伍していきます。
ついては,平成23年度概算要求枠において,国立大学法人の運営費交付金を8%削減対象から除外するとともに,長期的な視野に立って,国立大学への財政支援の拡充を強く求め,本学がこれまで以上に地域社会に貢献できるよう関係各位のご支援をお願いするものであります。
平成22年7月16日
国立大学法人福井大学長
福 田 優